家賃滞納追い出し条項に無効判決
昔は、賃貸を借りる時には連帯保証人を立てないとダメでしたよね。連帯保証人になってくれる人がいなくて部屋を借りられなかったりするお客様もいました。また、連帯保証人もちゃんとした人じゃないと家賃滞納とかのトラブルがあった時に「ひとモメ」あったりして大変でした。いまは、連帯保証人の代わりになってくれる『保証会社』という制度ができて連帯保証人は不要になりました。保証会社の審査にパスしないダメだけど借主も大家さんも不動産会社も楽な時代になりました。そんな保証会社が家賃を滞納した賃借人との建物明け渡しを巡る裁判で最高裁は保証会社側の敗訴とする「家賃滞納による明け渡し条項は無効である」という判決を下しました。1・2審では保証会社側が勝訴していたので、最高裁での逆転敗訴ということになったわけです。
何がダメだったのか?
普通に考えれば、家賃滞納したのですから退去を求めるのは当然なのですが何がダメだったといえば一番の理由は、大家さん・入居者でない第三者である保証会社が【賃貸住宅の家賃を借り主が2カ月滞納するなどして連絡も取れない場合、物件を明け渡したとみなす】という条項を付けたことでこれが消費者契約法に基づき違法との判断でこの条項の使用を差し止めにしたわけです。このような判決が出ると各保証会社は家賃滞納による入居者を強制退去させる条項を付帯することが出来なくなりますね。個人的には最高裁の判決には納得できるけど、このような判決が出ると保証会社の入居審査が厳しくなって賃貸物件を借りられなくなる人も増えてしまうかなぁという懸念もあります。そして審査が厳しくなって物件を借りられなくなるのは、シンママや高齢者などの社会的弱者なんですよね。店子さんという大家さんから見れば弱者を保護するような判決にみえますが却って逆効果にならなければいいなぁって思います。
大家さんも大変なんですよ
一般的には店子さんの方が消費者として大家さんより弱い立場のように思われがちですが、大家さんも大変なんですよね。賃貸物件を所持しているといってもお金持ちや大地主さんの大家さんばかりじゃないんですよね。かなり昔に実際に体験した事ですが、お婆ちゃんの大家さんがいました。その人は亡くなったお爺さんが残してくれた木造2階建てのアパートの一室で生活をして、残りの部屋の家賃で細々と生活していたのですが、家賃滞納する入居屋が多くて毎日の食事にも事欠くような状態だったんです。それで困って当時、僕の勤務していた不動産会社に相談に来て僕が家賃回収の業務を受け持ちました。それまでお婆ちゃんは不動産会社を通さずに契約していたので不動産会社が介入したことで家賃滞納者の数名は直ぐに改善されたのだけど最後の一件は全然払わない。「払う」と約束しても何度もウソをつく。払えない状況ではないんですよ。お婆ちゃんが自宅で粗末な食事をしているのに家族4人で年中外食していましたから。なにせ滞納が2年以上でしたからね。最後は強硬策で追い出しましたけど結局2年分以上の滞納家賃はほとんど回収できませんでした。そういうこともあります。今回の判決が消費者保護の観点からの判断だと分かっていますが家賃滞納して2カ月も連絡がつかない人を「消費者」として取り扱っていいのだろうか?そもそも「消費者」って商品やサービスに対して対価を支払って初めて「消費者」なんじゃないかな?って思います。まぁひとつの判例がでましたので今後、こうした問題に賃貸保証会社の各社はどのように取り組んでいくのか注目しています。
関連した記事を読む
- 2023/04/08
- 2023/03/02
- 2023/01/23
- 2022/12/21